巻寿司からDiversity(多様性)を考える
こんにちは。巻寿司大使の莉莉です。
先日、市内の大学で大学生を対象にした巻寿司講座を試みました。
こちらの大学では、留学生と日本人学生がともに学び
「共生力を身につける」ことを目的にした講義を行なっています。
今期はデンマーク、スペイン、ポルトガル、ポーランド、
フランス、中国、台湾からの留学生が受講しているそうです。
この講義のひとコマを利用して、巻寿司講座を開催しました。
前半は、パワーポイントを使いながら寿司の歴史、寿司の種類、
特徴、地域性、流行の飾り巻などについてお話ししました。
寿司=握りずしというイメージを持っていた留学生達、
古くから郷土に伝わる巻寿司のことを聞いた日本人学生達は、
初めて知る「寿司」、「巻寿司」の話に真剣な眼差しで耳を傾けていました。
また季節の風物やキャラクターの飾り巻寿司の写真を初めて見て、
その芸術的な出来映えにとても驚き感心していました。
後半は、実際に各自で巻寿司を巻く実技です。
はじめに学生達の前でデモンストレーションを行ないました。
ポイントを抑えるだけで巻寿司を綺麗に作れることが分かると
学生達は早く試したくてソワソワしています。
そして各テーブルに分かれてスタート。
学生達は、まるで小さな子供のように、
それぞれ出来上がった巻寿司を見せ合いながら大喜びしていました。
留学生達にとっては当然ですが、多くの日本人学生にとっても初めての経験だったようです。
最近は各家庭で巻寿司を巻く機会は少なく、「買って」食べるものなので
「巻寿司を巻く」のは貴重な経験になったようです。
帰国後も巻寿司を作りたいという熱心な留学生達から、
「炊飯器が無いので、すし飯を鍋で作る方法を知りたい」
「椎茸甘煮の作り方を知りたい」
などいろいろな質問を受けました。
「帰国後も母国で揃う材料や調理器具で作れるようなレシピが欲しい」
と私への課題も出されました。
現地で調達できるものでレシピを考えることに少々戸惑いました。
一般的な鍋でごはんを炊き、すし酢を調合し、
一から具材を手作りすることやレシピの英訳作業は、よい勉強になりました。
今回の巻寿司講座を通して、みんなで楽しい時間を過ごしました。
同時に多くの人と一緒の時には、気をつけなければならないと思うこともありました。
それは食品に対するアレルギー、ベジタリアン、宗教上の理由で
特定の食品に対するタブーなど同じ食品を食べることができない方達への心配りです。
食品に対するアレルギーのある方は年々増えています。
アレルギーの原因となる食品はいろいろあります。
例えば、最近よく耳にするのはグルテンアレルギーです。
食品や調味料の原材料の表示を見るとグルテンを含むものは少なくないので
使用する食材や調味料には注意しなければなりません。
また外国の方とご一緒すると「ベジタリアンです」という方が多くいらっしゃいます。
ベジタリアン=野菜や豆などしか食べないというイメージです。
しかし話を詳しく伺うと
「乳製品を含む動物性食品を全く口にしない」
「肉や魚は口にしないけれど、たまご、チーズ、乳製品などは大丈夫」
というようにベジタリアンにも色々なタイプがあるため、
ひとりひとり口にできる食材は違ってきます。
さらに日本に暮らす私たちにとって分かりにくいのは、宗教上の理由による食のタブーです。
気軽に海外旅行に出かける時代なので、
例えばイスラム教では豚肉やアルコールを口にしないこと、
ヒンドゥー教では牛肉を口にしないことをご存知の方は少なくないと思います。
「それならば牛肉、豚肉、酒を避ければ大丈夫」と考えるのは少し待って下さい。
日本には、肉を使わなくても魚介類を用いた料理や加工食品は数多くあります。
また調味料の多くは、その原料が米や大豆など植物由来です。
しかし市販の加工食品や調味料の原材料の表示をよく見ると
「ポークエキス」「肉エキス」という記載は少なくありません。
また日常的な調味料の中には、酒を原材料にして製造される調味料もあります。
そのため宗教上は、大丈夫とは断言できないのです。
それでは「あれも駄目」、「これも使えない」、「食べられないものばかりになってしまう」
……大変に思うかもしれません。
しかし、そんなに心配しなくても大丈夫です。
多くの方と一緒の時には、いつもより少し多めに気配りをして下さい。
巻寿司の具材や味付けは、アイデア次第なのです。
自国の文化を知ることは、他国の文化を理解する上で大切なことではないかと思います。
日本に興味のある方々が日本のことを知る方法は
新聞、雑誌、ニュース、SNSなどいろいろあります。
その中でも、自分の目で見て、耳で聞いて、
自ら経験することで「日本」を知ってもらうことは、
とても大切なことではないかと思います。
今回のレポートは少しかたい話になりましたが、
巻寿司大使の活動を通して、相互理解の小さなお手伝いができれば幸いです。
いろいろな国の方と一緒に、巻寿司を巻いてみませんか?
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